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あかりの家自閉症療育のキーワード集抄(1)
- #1 わかりやすさ
- 「わかりやすさ」は自閉症療育の基本である。
空間や手順や視覚化やスケジュール等の構造化 された「わかりやすさ」は良く知られている。
しかし、一貫性、振舞い方を教えてくれる人、状 況を整理してくれる人、ズレを見抜いて修復してくれる人等の「わかりやすい」人や「わかりや すくしてくれる」人も重要な「わかりやす」である。
(1)スピードメーター
自転車で職場まで通勤していた A さんだが、いつもスピードを出しすぎて危険であった(推測 30km/h)。
一緒に付き添ったりしたが、その時は良くてもいざ 1 人になると結局は元のままの ことが続いた。
「1人でも自律的にスピードを守って走行できる方法はないか?」と悩んでいた時、 スピードメーターの存在を知り、早速取り付けてみた。
「スピードは19km/hまでは○。20k m/h 以上は×」とルールを決め、実際の走行データを後でチェックした。
それからは、実に見事 にスピードを守って通勤した。
- #10 成功させる -登園拒否は自信がつけば無くなった-
- A君の通所拒否は長年続いていた。
たまに通所しても、玄関をスムーズにくぐれない。
そういった相談に訪問支援をした。
作業中の頻回なトイレ通いとお茶のみによる悪循環、途切れがちな作業がトイレ通いを誘発する。
そういった、これまでの状況を整理して、ある日、次のことを集中的に取り組むことにした。
(1)うまく援助してあげられなかったことを本人に謝り、「これからA君がうまくいけるよう、 きちんと応援するからね」と、これから援助する職員の姿勢を伝える
(2)大集団の中で宙ぶらりんの状態ではなく小集団(3名)の作業室に場所変更
(3)指示待ちではなく自立的に動けるための作業手順の構造化。(手がかりづくり)
(4)「お茶は休憩の時飲みます」等、約束事を文字に書いて掲示。それを場面毎に確認する。 そういった取り組みの結果、うまくいける場面が増えてくると通所拒否はなくなる。玄関もス
ムーズにくぐれるようになった。
- #13 環境を変えて取り組む
- (2)場所を変更して、そこでは失敗させない
A さんは眠前薬を服用していたが、ある時から毎日その薬を噛んで吐き出し、手になすりつける行為が続くようになった。
そこで服用する場所を、吐き出し続けているリビングではなく、全く違った環境の医務室に変え、同時に初回はうまく飲めるよう(絶対に失敗しないよう)対応した。
場所を変えた初回の対応がうまくいき、以降もそこでは噛んで吐き出すことはなくなった。
- #15家族への応援
- (3)家庭との連携、信頼関係
Eさんのこだわりは相当に激しく苦しい。集中的な取り組みで、あかりの家での状態やこだわりが改善し、表情も和らぎ始めた頃、帰省時の家庭では、全く別の大きな問題が出始めた。
そして、今までに増して家族を困らせ不安が募った。
しかし、職員が家に応援に行き特に問題とされた状態が改善するにつれ、家族の不安は消え、前向きの気持ちに変化していった。
<S.V> どんな方法をとる場合でも、我々プロは、親と意見が同じところから利用者との付き合いを始めなければならない。
いくらいい方法だと思っても、親が反対だと絶対上手くいかない。
薬でも、親がダメだと思ったら、どんな薬を飲ませても悪いことしか起こらない。お母さんの状態が悪くなると、連動して彼らの状態も悪くなる訳だから。
避けなければならないことは、帰省後の状態の崩れを親のせいにしてしまうことです。
我々が崩れを親のせいにし、我々と親とがバラバラだと間に挟まった自閉症の人の状態は必ず悪くなり、その状態を三者が諦めて努力しなくなってしまうからです。
親は我々以上に苦労しています。
それを超える苦労をし、結果を出さない限り、親たちはプロを信用しません。
小さい時からプロは役に立たず、混乱させられるようなことばかり言われてきました。
親に信頼してもらえば、連携することが可能なはずです。
むろん「難しい」です。尋常な苦労では、今のままです。
- #19仮説をいくつ持てるか いつでも修正できるやわらかさを持つ
- ショート利用のAさん、食後の食器下洗いの際、一寸した興奮を2回連続して起こす。
「家で食器洗いをしてないからだろう」と考えた。
ところが、お家に聞くと「家でもしている。ただ、ゴム手袋で洗っている」とのことであった。納得・反省! ちなみに、しっかり説明した3回目から興奮することなく下洗いをするようになる。
- #23良いことか悪いことか聞く。そして、こちらのメッセージをしっかり伝える。
- Cくんは、芳香剤・文具・お菓子等の買い物のこだわりが強く、毎日5千円から多い時で3万円も買込む。要求が叶わないと大暴れし、家族だけでは対応できず警察の協力を得ることもあっ た。そういった経過の後、あかりの家の短期入所利用に至る。
利用初日、持ち上がっている問題に対してどう思っているのか、尋ねてみた。
「お母さんを叩くのは?」→「ペケ」、
「暴れてお巡りさんが家に来るのは?」→「ペケ」
「毎日、芳香剤を5千円も買うのは?」→「(飛びつくようにニヤッとして)マル!」
「ダメだよ。芳香剤5千円はペケ。そんなこと言ってると本当にお家にいれなくなっちゃうよ。職員も頑張るから、Cくんも頑張ろう」という会話であった。
どちらかというと安定的な1ヶ月の短期入所を終えて、両親が迎えに来られた。その場に職員が立会い、母親とCくんが約束した。
(母親)「芳香剤は?」→(Cくん)「買いません」、②(母親)「叩くのは?」→(Cくん)「ペケ」。そういった約束や帰宅後の日課表等を紙に書き、家に掲示してもらった。
帰宅後6ヶ月間、買わない日々が続いている。